日産自動車は9日、西川(さいかわ)広人社長兼最高経営責任者(CEO)が9月16日付で辞任すると発表した。
自社の株価があらかじめ決めた金額を上回った場合にその差額分を金銭で受け取れる権利「ストック・アプリシエーション・ライト(SAR)」をめぐる西川氏の不正に関する社内調査の結果が報告され、これにより株価に連動する報酬で不正に上乗せされた金額を受け取っていた問題が表面化、社内外からその責任について問う声も強く、取締役会が辞任を求めていた。
西川氏の後任について正式に決定されるまでは、山内康裕COO(最高執行責任者)が代行を務めるという。
西川氏は9日夜、横浜市の本社で記者会見し、「株主、取引先、従業員に感謝申し上げるとともに、(日産の)負の部分をすべて取り除くことができずバトンタッチすることになり、大変申し訳ない」と謝罪した。
カルロス・ゴーン前会長の側近だった日産前代表取締役のグレッグ・ケリー被告が、西川氏から役員報酬の増額を求められ、西川氏のSARの権利行使日を1週間ずらすことで約5,000万円近く上乗せされた金額を西川氏に支払ったという。
要は、権利の行使日が決まっていたにもかかわらず、その後の株価が上昇していたことから行使日を遅らせ、不正に増額分の支払いを受けたということだ。この不正な手口で、ゴーン前会長が1億4千万円、ケリー前代表取締役も700万円を得ており、ほかにも元取締役2人、現職・元職の執行役員4人にも不正な支払いがあったこと認められた。
西川氏に対しては、ゴーン前会長の不正を止められなかった責任を問う声がもともとくすぶっていたところ、ゴーン前会長が進めた拡大路線のツケで業績が急速に悪化。自身の報酬不正問題も重なって内外から批判が集中し、社内の求心力も低下という、まさに泣きっ面に蜂状態だった。
ただ、西川氏を含み、不正な方法で報酬が増額されたことを知らず、またSARを利用した不正の指示などもなかったとのことから、西川氏らが自ら不正行為指示を行ったわけではないとし、西川氏らに責任の追求は行わない方針。
これに対し、西川氏と元取締役の1人は上乗せ額を返納する意向であるという。さらに日産は、この問題を機にSARの廃止も決定した。